2010年3月28日日曜日

MeSHの対象

MeSHを使う人たちとして、1.学習者、2.教育者、3.コンテンツ開発者、4.翻訳者が挙げられます。この中で、2.と3.(と4.)が共通であることが多いと思いますが、教育者以外がコンテンツ開発を行う状況も考慮して分けております。システム的には、コンテンツ開発者が開発したコンテンツをテストすることが必要であることから、共通となります。

確認:利用場面別のMeSHの利用体系

マルチメディア教材を利用した授業体系

「見せる」教材としてのマルチメディア教材
 工学系で扱われる多くの不可視現象を、インタラクティブな教材を利用して説明する。すでに10年以上前から、板書を用いない授業体系を取り入れて、板書を一切行わずに授業を行っています。このような授業体系を取り入れることにより、期末試験での論述問題の正答率が向上した。学生が、教員の話をイメージしやすくなったものと分析している。

自己学習環境としてのマルチメディア教材

「見せる」授業体系だけでは、論述問題の正答率のみ向上した。しかし、学習者の理解度を向上させることを考えると、学習者が授業で使用したシミュレータ教材を利用して学習することが望ましい。
しかし、単にシミュレータ教材を配布したのみでは使い方が分からないなどの問題が発生する。そこで、授業または授業と同等の説明を行った説明を記録(録画)して、全部または一部を伴った教材として提供することで解決できる。

演習室などでのマルチメディア授業

少々特殊な環境ではありますが、演習室を利用する授業について説明します。これにより、考えられる利用パターンとして、「教員が説明してシミュレータの利用手順を見せた後に学習者が実験を行う」があげられます。また、学習者のシミュレータ操作情報を記録しておくことにより、「ある学習者がきちんと学習を行えているか教員側で判断できる」「模範的な学生の操作情報を取得して、全体に提示することができる」などがあります。

教材は国境を越える

これまで、シミュレータ教材は日本語だけでなく、英語、フランス語、中国語、韓国語、アラビア語版の開発が進められています。Wikipediaによれば、国連の公用語は、英語、ロシア語、中国語、フランス語、アラビア語、スペイン語の6カ国語らしいので、後はスペイン語とロシア語版を開発すれば世界制覇だ、という冗談はともかくとして、やはり使われない教材を開発するのはモチベーション維持の面で難しいです。そこで、翻訳成果をみんなで共有できればモチベーションも維持できると思います。

利用者のメリット

1.学習者にとってのメリット

 学習者のメリットは、これまでに述べているように、シミュレータ教材を含む統合されたマルチメディア教材を利用できることです。特に演習室などでの授業により、学習効率の向上が期待されます。

2.教育者にとってのメリット

 学習者の理解度向上が期待できることが最大のメリットです。また、自己学習環境を提供することにより、学習者が聞き逃したなどの場合に対応できる。さらに、シミュレータ教材を操作することで現象を理解した上で、踏み込んだ質疑応答が展開されることが期待できます。

3.教材作成者にとってのメリット

 シミュレータ教材の開発は、時間・手間などの人的コストが大きいものです。これまでの枠組みだと、開発したシミュレータ教材が、開発者に近い位置にいるごく少数の教員にしか使われないことが多かったです。

4.翻訳者にとってのメリット

 先に述べたように、翻訳しても誰も使わないようであればやる気が失せてきます。そこで、みんなで共有できる環境を提供します。これはシステムとしてはMeSHとして規定しなくても良いのですが、せっかくなのでMeSHを取り巻く開発環境の一環として開発する予定です。
 また、翻訳のために特別なプログラムが必要だとすると、翻訳作業が嫌になってしまう可能性が高いです。なぜならば、翻訳者が必ずしもコンピュータに詳しい者とは限りません。むしろ、世間一般を見回すと翻訳を生業としている方は、コンピュータ業界とは異なる分野に身を置くことが多いと思われます。
 以上のことから、特別なソフトウェア無しに翻訳成果を共有することが求められ、そのような仕組みを開発することで翻訳作業が進むと考えております。

全体としては、「シミュレータ間の通信の仕組み統一されている」→「シミュレータを開発して授業に使いたい」→「開発したシミュレータを使いたい」+「翻訳が容易」→「コンテンツの充実」というスパイラルがうまく回れば良いな・・・と思ってます。

ついでに言うと、ある科目に使うために開発したシミュレータが、関連する他の科目で活用されることもあると思います。活用も、関連科目でピッタリ使えるものもあれば、ちょっと違うけど何とか使えるレベルまで様々だと思います。教育を受ける側に立てば、同じシミュレータが出てくれば、何らかの関連があることを学習する効果が期待できるとも思ってます。
よって、学習者から見てバラバラに見えていた科目達が、シミュレータという指標によって結びつけられると学習効果が向上するのではないかとも思ってます。
この辺は、まだ私も実現できるかどうか分かりません。まずはシミュレータ教材開発者を増やすことと、MeSHに対応した教材を増やすことが第一だと思ってます。 このエントリーをはてなブックマークに追加